「安定した会社に入りたい」は危険?

就職、転職の会社選びの基準に「会社の安定性」を重視する人が多いようです。

景気の低迷が続いており、変化の激しい時代ですので、会社の将来に不安を感じながら仕事はしたくないですよね。

時代に合わせて変化できる ”安定した会社” に入りたいものです。

ですが、安定した会社に入りたい理由が、「リストラされたくないから」や、「定年までずっと会社に居ることができれば安心だから」だとしたら、考え方をアップデートする必要がありそうです。

というのも、一昔前でしたら、会社も発展し雇用も維持することができましたが、現在は難しくなっています。

ここでは、安定性の高い会社と、安定性の高い会社でも雇用維持が難しい理由、そしてリストラが怖くなくなる方法について説明します。

最初に結論

・安定性の高い企業とは、時代に合わせて変化し、成長を続ける企業。
・安定性の高い企業でも、バブル期のような発展はしないので、変化できない人や、能力の低くなった人を雇用し続けるのは難しい。
・そのため、私たちは市場価値を上げ続ける努力が必要となる。そのため市場価値を上げられる企業にいることが大事。

安定性の高い企業の条件とは

将来性のある業界にいること

将来性のある業界とは、市場の需要の高く、今後も伸びそうな業界のことです。要は、これからも仕事がたくさんありそうな業界です。

ではどの業界が将来性があるのか。それは時代により変わるので業界の調べる必要がありますが、現状(2022年)でしたら主に以下の業界です。

  • IT業界
  • 電子部品・半導体業界
  • ゲーム、エンタメ業界
  • 商社

変化できる体質

変化の激しい時代においても市場のニーズ、将来の需要を想定して積極的な投資と自ら変化できる体質であること。
つまり、これまでやってきたことに捉われず、新たなことに挑戦し続けられることが大事です。

例えば、製紙会社なら、デジタル化とリモートワークの波で印刷用紙の需要が落ち続けることが予想できます。
このまま時代の流れを受け入れると落ち込んでいく一方なので、これまでの技術を活かして新たな道を開拓するなど、これまで主力としていた事業に依存することなく挑戦を続けることが必要となります。

業界内でのシェアが大きい

業界内で大きなシェアを築いていれば、強者の優位性を発揮できます。

主に次のような優位性があります。

  • 特許権、商標権、著作権などの知的財産を持っていれば、一定の持続可能なシェアを持てる。
  • 強いブランドも商標権に守られた知的財産として、一定の安定性を企業に与える。
  • 家電量販店などの小売業では、シェアを高めて大量仕入れをすることにより、メーカーとの価格交渉を有利に進めることができる。

※ただし、シェアが大きくなり過ぎることにより、小回りがきかず、変化しにくくなる傾向もあるため、見極めの際は注意が必要です。

今回の記事では、「企業の安定」には「変化できる体質」がポイントと考えてください。

安定する企業でも雇用維持が難しい理由

時代遅れの高度経済成長マインド

今でも次のような終身雇用、年功序列の制度となっている会社が多いように感じます。

  • 新卒一括採用で定年まで終身雇用。役職により年収の差はありつつも、年齢を基準にして決まる。
  • 中途入社の場合は、年次と役職により、人事の規定にで年収が決まってくる。

会社により、かたより具合は違いますが、このような終身雇用、年功序列に疑問を抱かず受け入れている人が多いのではないでしょうか。
あるいは、このような制度の方が安心できる人もいるかもしれません。

社員全員が十分に活躍できていれば問題ないのですが、ある程度の規模の企業になると、どうしても窓際(若いときは活躍したが今は活躍できていない)の人が現れてきます。
それでも高度経済成長期で当たり前のようにモノが売れる時代では、窓際の人を養うことが出来ました。

しかし、そのような時代はとっくに過ぎています。

さらに人口の減少が雇用維持の難しさに拍車をかけます。
これからの成長を担う新卒、第2新卒が年々減少し、若手人材の獲得が難しくなってきているのです。
企業内でも高齢化が進んでいるので、企業の新陳代謝を活発にするため、早期退職制度を設けるなどして、企業の若返りをはかっています。

この現状を見ても、高度経済成長期から受け継がれてきた終身雇用、年功序列の維持は現実的ではなくなっています。

これ以外にも、雇用の維持が難しい理由があります。

企業の安定と、雇用の維持のジレンマ

まず企業が安定して成長するには、時代に合わせて変化できる企業体質が必要です。

さらに雇用も維持させるには、企業の変化に合わせて社員もスキルや考え方を変化させていく必要があります。

逆に言うと、社員全員がスキルや考え方を変化させれば、雇用も維持させることができそうですが、現実は難しそうです。

適時、教育を行っても成長しにくい人や、考え方を簡単に変えられない人もいます。
そもそも人には得意、不得意があり、教育を受ければ何にでも変われる万能な人はいないのです。

他の考え方で、雇用の維持は考えられないでしょうか。

得意、不得意があるなら、企業内で得意を活かせる仕事に就けば良いのですが、その能力を発揮できる仕事がなければ、「出来ない人」となってしまいます。
(適材適所という言葉がありますが、この「適材(人)」を「適所(部署)」へ割り当てることに力を入れている企業は少ないように感じます。人の能力を見極めることが難しいためかも知れません)

このように、企業の安定のために変化をすることで、社員が仕事の変化に適合できなくなる「社員と仕事のマッチング不良」が発生してしまいます。

やはり、「雇用の維持と、企業の成長の両立」は難しそうです。

(※それでも終身雇用を目指し、年功序列の報酬ではなく、成果に合わせた報酬を支払うことで雇用の維持を保っている企業もあります)

そのため、企業だけではなく、社員の私たちも考えなければならないのが「人材の流動化」です。

企業は、時代の変化に合わせて、必要なスキルを持った人材を獲得し、自社では不要となったスキル保持者は別企業に移ってほしいと考えています。

企業の勝手な理由で社員を解雇することは出来ないので企業は悩みどころですが、私たちは解雇されなことを喜ぶより、いつまでも必要とされる人材になりたいものです。

企業が時代とともに変化するには、変化できる人材が必要

昔の終身雇用は望まずに自分の能力で勝負すると覚悟した人も、やっぱり雇用の安定を望みたいと決めた人も、どちらにしても収入を上げていきたいと思うなら、生涯現役で市場価値を上げることが必要となります。

「もちろん手抜きなど考えていない。日々の仕事も頑張っている!」と言うあなた。

本当に将来を見据えていますか?
割り当てられた仕事を頑張ることであなたの市場価値が上がれば良いのですが、市場価値を意識して仕事をしていますか?

例えば、「今はIT企業でプログラマーをやっており、いずれはプログラマーの上流のシステムエンジニアになる!」なら良いです。
なぜならITは今度も延び続ける産業であることと、システムエンジニアは慢性的な人材不足で、IT業界では市場価値が高いからです。

もし、今の仕事を続けることで何かのプロになるとか、ポータブルスキルが磨かれるといった事がなければ、何をすれば市場価値が上がるかを考えてみるのが良いかも知れません。

まとめ
終身雇用、年功序列に寄せている企業は成長しにくく、低迷をたどるか淘汰される。
会社に依存することなく自分が成長するため、市場価値を上げることを考える。

安定する企業より、安定する人になれ

企業が安定することは企業の経営陣が考えることです。ですが自分の雇用や収入が安定することは自分で考えるしかありません。

企業は、企業内で必要な教育はしてくれるかも知れませんが、「定年までの社員のキャリアまで考えてくれる」とは期待しないほうが良いです。

冷静に考えてみても、60歳までの自分の人生を会社に委ねてしまうのは、会社に依存しすぎです。もし会社に委ねたせいで自分のキャリアが厳しいものになっても、会社には文句を言えませんし。

まとめ
企業を安定、成長させるのは、企業の責任。
自分の雇用(収入)を安定、成長させるのは、自分の責任。

それでは、自分の雇用(収入)を安定、成長させる「安定する人」になるためには、どうすれば良いのでしょうか。

安定する人になるには

ここでの安定する人とは、いつでも転職できるだけの人材であり続けること。

そのためには、やはり市場価値を上げ続けることが大事です。

市場価値を上げるまえに、まず自分の市場価値を知り、業界の動向を調べて、将来性のある業界をだいたい把握します。
それを踏まえて、今の会社が将来性のある業界にいて、安定性のある会社であれば、このまま今の会社でスキルを磨くのが良いと思います。
ですが、今の会社では不安が残る場合は、将来性のある業界の企業を考えるべきです。

次の記事では、市場価値を上げ続ける考え方を詳しく説明します。

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参考文献

藤井薫 「働く喜び未来のかたち」 株式会社言視舎 2018年

日本経済新聞社 「日経業界地図 2022年版」 日本経済新聞出版 2021年

森岡毅 「苦しかった時の話をしようか」 ダイヤモンド社 2019年

宇都宮隆二 「適職の結論」 SBクリエイティブ株式会社 2020年

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